世界のペニスサイズは本当に大きくなっているのか?
30年の変化を追う
導入
「平均的なサイズが時代によって変わる」──そんなことを普段考える人はあまりいないでしょう。
身長や体格が世代ごとに変化することは知られていますが、性器のサイズについても同じような変化があるのか、と聞かれると多くの人は意外に思うはずです。
実は、近年の国際的な研究では「この30年で勃起時の平均サイズが大きくなっている」という結果が報告されています。
果たしてこれは本当に人類全体の変化なのか、それとも調査方法や環境要因の影響なのか──本記事ではその実態を、論文のデータをもとに解説します。
サイズは本当に大きくなっているのか?
複数の研究が示すのは、「世界的に勃起時の平均サイズが上昇傾向にある」という事実です。
とくに1990年代以降のデータを比較すると、その差は統計的に有意であることが確認されています。
ただし「すべての男性が伸びた」という単純な話ではありません。統計的な傾向はあるものの、個人差の範囲は依然として広く、また調査方法や対象地域によって数値は揺れ動きます。
つまり「大きくなっている」とはいえ、それを一律に「誰にでも当てはまる」と考えるのは誤解を招きます。
なぜ変化が起きているのか?
研究者たちはいくつかの要因を指摘しています。
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思春期の早期化
栄養状態や生活環境の変化により、思春期の開始が早まる傾向があります。ホルモン分泌の時期が早いほど、成長期に影響を与える可能性があると考えられます。 -
肥満や生活習慣の変化
一見すると逆効果のように思えますが、体格全体の変化が性器サイズの測定に間接的に関わっている可能性もあります。 -
測定・報告方法の違い
自己申告ではなく、医師による測定が増えてきたことで、過去より正確なデータが集まっているとも言われます。
論文から見える実態
30年で24%増加を示した国際解析(2023)
― Penile length has increased over the past 29 years: A systematic review and meta-analysis
55,000人以上の男性のデータを解析した国際的研究では、勃起時の平均長さがこの30年で約24%増加していると報告されました。著者らは「思春期の早期化や環境要因が関与している可能性」を挙げています。
さらにこの研究では、地域によって平均値に差があることも示されました。
傾向としては、サブサハラ・アフリカ > 欧州・南アジア・北アフリカ > 東アジア の順にサイズが大きいとされますが、その理由については明確にはわかっていません。
測定方法や生活環境、遺伝的背景など複数の要因が関与している可能性はあるものの、現段階では「なぜ地域差があるのか」は不明とされています。
世界的な基準値をまとめた統合解析(2015)
― Am I normal? A systematic review and construction of nomograms for flaccid and erect penis length and circumference in up to 15,521 men
この研究では、医師が標準化された方法で測定したデータを集め、弛緩時と勃起時のサイズを整理しました。
結果として、弛緩時の平均長さは約9cm、勃起時の平均長さは約13cm。周囲長については、弛緩時で約9.3cm、勃起時で約11.7cmと報告されています。
また、背が高い人ほどサイズもやや大きい傾向が見られました。ただしこれはあくまで統計的な傾向であり、身長が高ければ必ず大きいというわけではなく、幅広い個人差があることも強調されています。
一方で、勃起時の測定データは比較的少なく、弛緩時の「伸ばした長さ」には研究間でばらつきが多いなど、いくつかの制約も示されています。
地域別の分布を明らかにした国際解析(2024)
― Global trends and perceptions of penile size: A systematic review
この研究は、医師や医療従事者が標準化された方法で測定した研究だけを対象にしたシステマティックレビューです。
合計で 33件の研究、36,883人のデータ が統合され、バイアスリスクは中程度から低いと評価されました。
世界全体での平均値は以下のとおりです:
- 弛緩時の長さ:9.22 cm
- 伸ばした長さ:12.84 cm
- 勃起時の長さ:13.84 cm
- 弛緩時の周囲長:9.10 cm
- 勃起時の周囲長:11.91 cm
さらに地域別に見ると、**アメリカ地域(北中南米)**が最も大きな値を示しており、弛緩時長さ 10.98 cm、伸ばした長さ 14.47 cm、弛緩時の周囲長 10.00 cm と報告されています。
研究者は「地域差を理解することは、身体イメージや治療方針を考える上で重要」としています。
生活・心理的な側面から考える
数値が伸びているという事実を知ると、安心する人もいれば、逆に不安を覚える人もいます。
「自分は平均より小さいのでは」「比較されるのが怖い」といった悩みは、多くの場合サイズそのものよりも「認知のギャップ」によって生まれます。
また、性の満足感はサイズだけで決まるわけではありません。研究の多くが示しているのは、心理的な安心感・相手とのコミュニケーション・性的経験の質がむしろ満足度に強く影響する、という点です。
では、個人としてどう向き合うか?
数字の変化を知ると「自分は大丈夫だろうか」と気になる人も少なくありません。
ただし、平均値の上下がそのまま日常の性生活や満足度に直結するわけではありません。
研究が示すのは「多様性の中でどう受け止めるかが大切」ということ。
ここでは詳しく触れませんが、生活習慣や心理的な向き合い方、市販の器具や医療的な選択肢など、個人ができる工夫にはさまざまな形があります。
こうした「個人としての向き合い方」については、今後の記事でさらに深掘りしていきますので、ぜひ続きもご覧ください。
まとめ
- 世界的なデータでは、勃起時の平均サイズがこの30年で増加している。
- その理由は生物学・環境・社会文化の複合的要素に由来する。
- 地域による差も確認されているが、原因はまだ明らかではない。
- 個人差は依然大きく、数値に一喜一憂する必要はない。
数値の変化を知識として理解しつつ、安心して次の情報へとつなげていくことが、健全なスタンスと言えるでしょう。
参考文献
- Belladelli F, et al. (2023). Penile length has increased over the past 29 years: A systematic review and meta-analysis. World Journal of Men's Health. リンク
- Veale D, Miles S, Bramley S, Muir G, Hodsoll J. Am I normal? A systematic review and construction of nomograms for flaccid and erect penis length and circumference in up to 15,521 men. BJU Int. 2015 Jun;115(6):978-86. doi: 10.1111/bju.13010. Epub 2015 Mar 2. PMID: 25487360. リンク
- Mostafaei H, et al. (2024). Global trends and perceptions of penile size: A systematic review. Andrology. リンク